知ると面白い、うつわのこと
お気に入りを長く愛でたくなる、
うつわの知識。
知れば知るほど奥深いうつわの世界。
単純な形や色ではなく、素材や釉薬の成分、焼成温度や、湿度、酸化・還元。
ひとつのうつわにいろいろな要素が複雑に絡み合って、
ケユカのうつわもつくられています。
そういったうつわのことを知ると
きっと、お気に入りを探すのが楽しくなったり、今使っているうつわにもきっと発見があります。
ケユカで扱うことの多い
釉薬・技法をご紹介します。
釉薬(ゆうやく・うわぐすり)
釉薬とは、陶磁器の素地の表面を覆う、ガラス質の層のことをいいます。陶磁器の表面を覆うことで、水や汚れが素地に染み込むことを防ぎ、表面もなめらかになることで、普段の生活で使いやすいうつわがつくられています。
ここでは、ケユカのうつわに多い7種類の釉薬についてご紹介します。
ご紹介する釉薬の特性は、素地(磁器、半磁器、陶器・陶土の中に含まれる成分)や窯の温度によっても反応が異なり、一概に釉薬だけの反応によるものではありません。
1.動きやすい・流れやすい釉薬
動きやすく・流れやすい釉薬の特徴として、焼成時の置き方に添って上の方は釉薬の層が薄く、下の方に厚みが出やすいです。画像にあるような垂れが生じ、下の方に溜まったような仕上がりになることも多く、厚みがある部分に貫入というヒビが入ったりします。
また、色や種類の異なる釉薬・化粧と重ねたりすることで、その混ざりを楽しむこともできる釉薬です。
2.焼成時に変化する釉薬
(窯変釉:ようへんゆう)
釉薬や素地(磁器・陶器・半磁器など)の成分と、窯の中の温度の高い低い、火のあたりやすい・あたりにくい箇所によって、人為的に個体差を表現する釉薬です。艶の出具合や、釉薬自体の色合いが変化したりしますが、化学反応によって生まれる焼き物の個性を引き出す手法でもあります。素地土の成分や、釉薬や化粧と重ねることによって、さらに複雑な変化を生み出すこともできます。
3.きらきら光ったり、塊が見える釉薬
(結晶釉:けっしょうゆう)
表面に斑点やきらきらとした結晶が見える釉薬になります。焼成時の火のあたり具合や温度の違い等によって結晶の見え方や結晶の出る範囲に個体差があります。
釉薬の種類や焼成温度によって表面に小さな凹凸があり染みがつきやすくなっているので、目止めやご使用前の器の吸水をおすすめします。
4.シンプルに色味を楽しむ釉薬
(石灰釉薬:せっかいゆうやく、
いしばいゆうやく)
色味の変化などが比較的少なく、安定した焼き上がりになることから、大量生産品に使われていることも多い釉薬です。ケユカでは、透明感を感じる釉薬として、スッキリした形状と組合せて選ぶことが多い釉薬です。
透明感がある一方で、色ムラなどが生まれやすく、釉薬を施釉する作業も慎重に行うことが多いです。また、透明感がある釉薬であれば、形状自体の段差や彫りに釉薬が溜まり、その表情を際立たせることもできる釉薬です。
5.砂や鉄粉を混ぜた釉薬
土の中や釉薬の中に砂や鉄粉をまぜることで独特の表情が出ます。砂や鉄粉入りの釉薬は、その量が不均一な部分があったり、直接筆でうつわに塗ってざらざらした質感を表現したりと、クラフト感ある仕上がりになります。
6.金属や鉱物の成分が多い釉薬
火のあたり具合や焼成温度、うつわなどの形によっても光り方、マットや艶の質感が異なります。釉薬の種類によっては、金属特有の黒光りのような風合いが生まれ、渋く、無骨な印象になったり、深みある味わいに仕上がります。
ご使用前にさっとお水に通すと、シミ等がつきにくくなったり、酸の強い料理による変色も予防することができます。ご使用後はすぐに洗い、軽く拭いてから自然乾燥するなどメンテナンスをすることをおすすめします。
7.ヒビを育てる釉薬
(貫入釉:かんにゅうゆう)
素地と釉薬の収縮率の違いから生じる、細かなヒビを貫入といいます。使用上問題はありませんが、使っていく間にヒビが増えたり、汚れがヒビに染み込んでヒビが目立ってきたりします。ご使用の前に「目止め」を施しておくと、食べ物や飲み物の汚れが染み込みにくくなり、お手入れも楽になります。
萩焼に多くみられる釉薬で、長く使うことで貫入の部分の色の変化を風合いとして楽しむような【萩の七化け】という言葉もあります。
絵付け・装飾
釉薬だけでなく、色をつかって絵付けで柄などを入れたり、道具を使って素地を削って柄を施したり、いろいろな方法で、うつわに装飾を施します。
ここでは、ケユカのうつわでも取り入れている技法を5つご紹介します。
1.下絵付け(手描き・パット印刷)
下絵付とは、素焼きした生地の上に絵付を施す技法です。繊細なタッチで、ひとつひとつ手描きのものもあれば、パット印刷という、スタンプのようなものを使って、同じ絵柄を量産する方法もあります。絵付した上に釉薬をかけて焼成するため、釉薬との相性で絵柄の風合いを考えたり、わざとにじませて釉薬で覆われたときの風合いを楽しめるように考えたりします。
手描きのものは特に、ひとつひとつ柄のタッチが絶妙に異なっていたり、かすれた部分などがあったりと、職人さんの技を感じられる仕上がりが特徴にもなります。
2.一珍(いっちん)
一珍とは、陶土や粘りのある釉薬などを、先端の細い注射器のようなもので絞りだし、絵柄を施す技法です。チョコレートやケーキのデコレーションに似たイメージ、といわれると想像しやすいかと思います。一珍自体に色をつけたり、釉薬との相性で一珍の見え方も様々変化するので、いろいろな装飾が楽しめます。
3.撥水
釉薬をはじく効果のある油性もしくは水性の液体で、絵柄や装飾を施す技法です。釉薬を施釉すると、加工部分は釉薬をはじくため、絵柄が浮かび上がり、装飾部分が際立ちます。
表面も凹凸に仕上がるので、全体的に奥行きを感じる仕上がりになるのが特徴です。
4.削ぎ・カンナ
素地が素焼きで焼成される前の、ちょうどいい硬さのタイミングで、うつわ自体に削りを入れる技法です。彫刻刀のようなもので削ったり、半自動の機械を使いながらカンナと呼ばれる削りを施したりします。道具は職人さんそれぞれに自作していることも多く、その窯独自の風合いでオリジナリティあふれる加工方法のひとつです。
5.吹付け
釉薬などをガン吹きで吹き付ける技法です。スプレーガンで吹き付けることで、薄い色の層で繊細な風合いに仕上げることができます。ケユカでは絶妙な色の変化や、グラデーションを表現する際に用いることが多いです。
まだまだいろいろな釉薬や技法があり、それぞれの呼び名も窯や産地によっても異なることが多く、ご紹介した内容はほんの一例となります。このように、複合的に起こる化学反応や・窯のノウハウによって受け継がれてきた奥深いうつわの技法が、私たちを惹きつける魅力でもあり、伝えたい魅力です。これからの食器選びにもお役立ていただければと思います。